2022/08/26
Wharfedale D310の話
卓上スピーカーとして購入。卓上スピーカーってサイズの制約がものすごく大きいから自作しようかって思っていたんだけど、ふと見たらこのスピーカーのデザインに一目ぼれして購入。
奥行き20cmならギリ使えるかなと。本当はもっと奥行きがない方が良いのだけど、このメーカーのこれより奥行きが薄いのはデザインが気に入らなかったりするんだよね。なら自作するわとなる。他のメーカーでもめっちゃ奥行きの薄いスピーカーとしてFAZON MIKROというのも見つけたが、なぜか密閉型だったので止めておいた。密閉型の方が低音が伸びるからバスレフよりも良いって主張もあるけど、箱が小さい密閉型は空気のダンプがかなり働くから抑圧された音になるんだよね。箱が小さいなら空気が抜けるバスレフの方が良いと思う。
もし自作で作るならPluvia7PHDのフルレンジかPluvia7PHD + TW4 Silkで5kHzくらいでクロスさせるか、w4-1879のフルレンジで作ってしまうか、ETON Orchestra 4-512 C8 25 + 28 SD 1で3kHzでクロスさせるというのを考えてしまいます。いろいろ考えているとSCW636 + TM4055-8の3wayなどもっと高いユニット使いたいという気になってくるのですが、卓上スピーカーと言う制約上サイズの制約がかなり大きいのでサイズの大きいユニットは使えません。そもそもそこまでこだわるなら箱のサイズにそこまで制約を加えたくないとなるし、妥協して作るならわざわざ手間かけて作る意味があるのか?と言う気になってきます。作るからには細部までこだわりたいんですよね。サイズが小さくても今までにない尖った設計ならありかもしれません。自分のアイデアを実現するというのが自作の醍醐味なので。
翻ってD310に目をやると、D310はペア5万以下。今回上にあげたユニットとネットワーク、箱などの材料費を考えれば大差ない金額になるでしょう。さらに俺人件費を加えると確実にD310のほうが安いでしょう。上にあげたユニットはそのサイズのユニットとしてはかなり上位のユニットなので、もっと安いユニットもあります。ですが、安く上げるための自作でなく、良い音出すための自作なので、そこケチったら手間が無駄になってしまいます。さらに制約が大きいモノづくりはかなりのノウハウが必要になるので、D310と同等の音質に仕上げるのはかなりの試行錯誤が必要になるはずです。そこ考えると自作より買った方が安いとなります。
またここが一番重要なんですがD310は見た目も良いんですよね。サイズ制約の中で箱容量を稼ぐには四角が一番いいのだけど、D310は四角ながらかっこいいデザインをしている。角が丸まっていたり、フロントパネルの色を変えてツートンにしたり、ユニットグリルのデザインが良いんでしょうね。他の商品のデザインだと「まぁ自作で良いかなw」と思ってしまうデザインで欲しいと思わないんだけど、この商品のデザインはそれを覆してしまうくらい良いデザインです。
さらにD310のスペックに目をやるとクロスオーバーが2.2kHzとかなり攻めた設計だと思いました。クロスオーバーを下げると、ツイーターの振幅量が増えてしまうので歪が大きくなって高域の質が落ちるのですが、ツイーターの受け持つ帯域を増やして、ウーハーの受け持つ帯域を減らすことで、低音の量感を増やす設計なのでしょう。ウーハーには極力低音再生に専念させると言うことです。
さらに再生帯域が65Hz-なので共振周波数もそのあたりだと思われます。共振周波数を下げるには振動板を重くするか、バネを柔らかくしてハイコンプライアンスに設計するかですが、箱が小さいので恐らく重い振動板を使っていると思われます。スペックとしてはFOSTEXのFW108Nに近い感じかな?重たい振動板を使うとレスポンスが心配ですが2.2kHzのクロスオーバーなのでさして問題はないのでしょう。そもそも16cmの2wayだとこれより2-3倍は重いユニットで3kHzくらいで繋いでいます。
つまりこのスピーカーは小さいユニットでいかに低音を出すかに注力して作られていると言うことになります。-3dBで65Hz,-6dBで60Hzの低音再生力はこのサイズとしてなら超優秀でしょう。もっとも似たようなサイズのDALIのSPEKTOR1(2kHzクロス,115mmウーハー,59Hz,-3dB)はもっと優秀ですが、デザインが全く気に入らなかったのと、ポートが後ろに付いているので脱落しました。D310はポートが下に付いているので、壁との距離を気にしなくても良いのがポイント高い。それに低音再生能力は所詮はカタログスペック上の話だし、私はこの小さなスピーカーにそこまでの低音再生能力は求めてませんから。
2.2kHzのクロスオーバーはおそらくツイーターで下げられる限界付近まで下げていると思われます。兄貴分のD320になると2.4KHzのクロスになっていて、13cmウーハーでD310より低音再生能力に余裕があるので、D310よりクロスを少し上げて高域の質を確保しているという感じでしょうか。それでも一般的なクロスオーバー周波数よりも低い周波数ですけど。また、D320の方が箱も大きくてD310より余裕のある音が出るでしょう。価格も大差ないし、サイズの制約がないならD320の方が良いと思いますが、私はD310のサイズ感が良いんですよね。
あとD310は金属系のユニットでないのも個人的にポイント高いです。マグネシウムユニットとかだと聴感上はニュートラルに聴こえても音色が汚れやすくて、雰囲気がスポイルされたりするので。
20220823_追記
忙しくてしばらく設置できなかったのですが、聴いてみました。アンプのスペースをまだ空けてないので一時的にPMA-60を使いました。コンパクトって最高だね!ケーブルも丁度いいのがなかったので、その辺に転がっていたmogami 3082を使いました。ケーブルはそのうち自分で作ろうかな。
■外観
音の前にまず見た目に言及すると、見た目は非常に残念です。見たらすぐ安物だって分かります。実際安いからしょうがないけど。前面から見るとそんなに悪くないのですが、側面裏面に貼ってあるシールの質感が駄目。おそらく木をうすーく削ってシート状にした突き板シートというものじゃないかと。このシールは木の導管の欠損なんかが見て取れるのでプリントではなく本物の木なんじゃないかな?違ってたらごめん。シールなのは確実です。底面にシートの継ぎ目があります。「木材だったら高級機と同じ突板仕上げと同じなんだから見た目は良いのでは?」と思われるかもしれませんが、触ると表面は導管の欠損で凸凹していて平滑ではありません。仕上がりとしては「ただ木材を切って、目止めによる平滑化も磨きも一切せずに染色塗料を染みこまして色付けただけ」というような仕上がり。塗装をどうやったら綺麗に仕上げられるのかというのを全く知らない素人が、ホームセンターでペンキ買ってきて仕上げた素人DYIレベル。別に悪く言いたいわけでなく、煽り抜きでその程度の工程しかやっていない仕上がりです。 まぁ、塗装は手間と時間がかかるので、拘ると値段が上がってしまうのでその辺りは妥協しているのでしょう。ですが、わざわざ安っぽく見えるシートを貼る必要があるのか?とは思います。ネット画像ではローズウッドが一番良さそうに見えたのでそれにしたのですが、このローズウッドの色で安っぽさを強調してしまい最悪です。安っぽい仕上げ+高そうな色=めちゃくちゃ安っぽい と言うことです。この感じだとブラックウッドにしておけば良かったかも。木目のないホワイトもありますが日本では売ってないんだよね。
ネットの画像では高級機も格安機もそんなに変わらないような見た目ですが、実機はそんな感じです。逸品館の人も「ローズウッドは在庫が残小でもしかしたら商品確保できないかも」と言っていたので、実機を見ないでネットで買う人には一番良く見えるんだろうな。
ちなみに近くで見たからいろいろ粗が見えるわけで、2mくらい離れるとネット画像に近い印象になります。卓上スピーカーでなく、2-3m離れて聴く人ならそこまで気にしなくても良いかもしれません。それでもクリア塗装もされてないので高級感はありませんがね。
■音質
さて、その音。はじめにまだエージングしていないので、この後音が変化していくであろうことは断っておく。
第一印象は「この小さな筐体からこんなに豊かな低音が!」というびっくり箱のようなスピーカーだと言うこと。想像の倍くらい豊かな低音が鳴る。ただ深くはないです。深くはないのですが、イコライザーとバスブースト両方全開で使ってるんじゃないかと言う感じのなり方をする。確かにイコライザーいらんわ。これ。
第二に感じたのは、解像度は値段以上に高いと言うこと。めっちゃ高いというわけでなく、以前持ってたSC-CX303に匹敵する感じでしょうか。SC-CX303とは価格が倍くらい違うので、お値段以上かな。と。全体にマイルドな音調でちょっと音が濁るのもCX303に似ています。似てないところは、当然ですがCX303の方が低域の伸びが良いです。でも量感は明らかにD310の方があります。D310のウーハーの口径は実測で約8cmで実効振動板面積は50cm^2なので、Pluvia7PHDと大体同じ。それでこの低音出しちゃうか?と驚いている。CX303より量感あるからね。すごいね。下にダクトがあるのも効いているのだろうか。リアバスレフなら壁際に置くようなものだし。ちなみにCX303は直径10.4pとD310よりも2.4cm大きい振動板ですが、たった2.4cmと侮るなかれ、実効振動板面積では85cm^2で振動板面積が1.7倍くらい違います。 また高域もCX303の方が伸びていたと思います。D310はツイーターの負担が大きいからか、高域が伸び悩んでハットの音に鮮烈さやクリアさ、鋭さが不足しています。
あとはピアノの音が混濁してたり、曲によってはボーカルまで濁って聴こえることがある。このあたりはエージングで改善されるだろうとは思います。ツイーターとウーハーとの繋がりが悪いと感じることはないです。このあたりはさすがですね。でも繋がりが悪いと感じることはないですが、低音盛り過ぎているせいか、それによってユニットの駆動に無理が来ているのか、不自然でちぐはぐに感じることが多いです。このスピーカーは自然さとか原音忠実を第一に作られたというよりは、「小さいスピーカーで如何に低音を出すか?」を第一目標に作られた印象です。でもね、このスピーカーは聴いてて楽しいんですよね。原音忠実ではないけど音楽の旨味は逃がさないようには作られている。音楽性は高いスピーカーだね。原音忠実志向の人に勧められるかは疑問ですが、小さいスピーカーでも低音の量感は欲しいって人には間違いなくお勧めできます。とにかく「この小さなスピーカーからこんな低音が!」と感心してしまう。
20230221_追記
推定で2000時間ほど鳴らしたので、追記。鳴らし方は音楽を普通に聴く以外は音楽ファイルをランダム再生か、youtubeを垂れ流ししている。アンプは初期の時と変わらずPMA-60,ケーブルはmogami 3082のまま。
初期の印象と比べると曇りが取れてきて、自然でまともな音になってきました。750時間から1500時間くらいでかなり良くなります。以前は濁りが気になった曲をかけてもほぼ気にならなくなっている。めちゃくちゃクリアってわけでなく、ややほんのわずかに曇る感じが出ているけど。奥行きも15mだったのが47mになっている。濁りの低下に伴って定位も良くなっているね。低域の量感に関しては低音は(このスピーカーから想像される量感よりもブーストされているという意味で)イコライザーとバスブースト両方全開でなく、どっちか片方全開な感じ。どのみちイコライザーいはいらん。わずかに曇る感じがあり、金管楽器にちょっと鮮烈さが足りないと言った感じ。基本ニュートラル傾向で、わずかに音が丸まっている感じかな。スピーカーのキャラクターはまだわずかに感じるが生楽器を聴いてもリアルを感じられる音。音楽性が高く楽しい音。この音楽性の高さは特筆に値する。その音楽的な音をPMA-60と言う高解像だけどそこまで音楽性が高くないアンプで出せるところが凄い。このスピーカー、メインで使っているスピーカーと比べると濁りがあるのだが、それでも歌手の歌声に聴き惚れてしまうほど良い音なんだよね。
上で「原音忠実志向の人に勧められるかは疑問」と書いたけど、これなら原音忠実志向の人にも勧められると思う。もちろん「機械の存在が消えるか?」と聞かれたら「音にD310固有のキャラクターはのるし、まだ、そのレベルには達していない」と答えるしかないが、かなり素直な音が出ているし、原音忠実志向の人でも価格を考えればその期待値を超える音が出ていると感じると思う。イマーシブといえるレベルまであと0.5歩といった感じかな。
現状わずかに曇った感じが消えないんだけど、今作ってるバーンインノイズ(Sound Improver 2)が出来たら鳴らしてみよう。でも、この程度の曇りならケーブルを単線化する程度で気にならないレベルには抑え込めるかもしれない。
■D310のまとめ
D310のここが良い
・小さいサイズなのに低音再生能力が良い。イコライザーいらない。
・音楽性が高い。
・原音忠実志向の人にも勧められる音質。
・底面バスレフポートで置き場を選ばない。
・デザインが良い。
・安い
D310のここが残念
・仕上げが安っぽい。木目シールはフローリングの補修用シールのような質感。あとユニットの組みつけ精度もよくない。フロントパネルの穴からズレてたりする。高級感は全くなし。このスピーカーを見て高いスピーカーだと思う人はいないでしょう。実際安いんだけどw 色はローズウッドでなくブラックのほうが良かったかも。
安っぽいところ以外は悪いところなし。サイズの制約がなければ他にも選択肢がありますが、このサイズでないといけないという人であれば買って損はないでしょう。
Wharfedaleか、ATOLL並みに気に入った!
筐体に貼ってあるシールの質感が・・・フローリングの補修用シールみたいな・・・
フロントパネルの穴とスピーカーユニットとの隙間に隔たりがあります。誤差をなくすのは難しいのでしょうけど、精度を上げるか、ズレてもわからないような組付け方にしてほしいですね。
2022/08/26 執筆
2022/08/26 公開
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